東京地方裁判所 昭和36年(ワ)3602号 判決 1964年5月18日
原告 安藤鶴太郎
被告 二井蓄電器株式会社 外八名
主文
一、原告に対して
被告二井蓄電器株式会社は金一〇九、三二九円、
被告株式会社中央熱学機械製作所は金一六四、六五六円、
被告田上アサ子は八〇、八三三円、その他の被告らはそれぞれ二六、九四四円を支払え。
二、原告のその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用はこれを三分し、その一は原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。
四、この判決中、原告勝訴部分は原告において、被告二井蓄電器株式会社、同株式会社中央熱学機械製作所に対しては各三〇、〇〇〇円、被告アサ子に対しては金二〇、〇〇〇円、その余の被告らに対しては各金五、〇〇〇円の担保を供するときは、その被告に対して仮に執行することができる。
事実
原告は「原告に対し、被告二井蓄電器株式会社、同中央熱学機械製作所は各自金一、三九四、六四〇円を、被告田上アサ子は金四七一、五四七円を、その余の被告らは各自金一五七、一八二円をそれぞれ支払え。訴訟費用は被告らの連帯負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求原因としてつぎのとおり述べた。
一、別紙目録<省略>第一(一)の土地は原告の所有である。
別紙目録第二(一)の建物は昭和三七年一月二三日以前においては田上嘉八郎の所有であつたが、同日同人が死亡し、同人の相続人である被告アサ子、同かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋が、被告アサ子は三分の一その他の右被告らは各九分の一の割合で相続し、右建物について右被告らが同割合による持分権を取得した。
二、原告は右土地のうち三六四坪三合を田上嘉八郎に賃貸し同人はその地上に別紙目録第二(一)記載の建物(以下本件建物という)を所有していたが、昭和二六年一一月頃から同人と原告間に右賃貸借関係終了の有無について争が生じ、昭和三二年四月三〇日東京高等裁判所においてつぎのとおりの訴訟上の和解が成立した。
(1) 田上嘉八郎は原告に対し右三六四坪三合の土地につき賃借権を有しないことを確認する。
(2) 原告は右田上に対し、右三六四坪三合の土地のうち別紙目録第一(二)の土地部分(以下本件土地という)の明渡を昭和三五年四月三〇日まで猶予する。
(3) 田上嘉八郎は原告に対し右猶予期間経過とともに、別紙目録第一(二)の土地をその地上に存する別紙目録第一(一)建物を収去して明渡すこと
三、したがつて、田上嘉八郎並びにその相続人たる右被告らは昭和三五年五月一日以降は本件土地を占有すべき権原がなくなり、右和解で定められた約定にしたがつてこれを原告に返還すべき義務があるにも拘らず、依然同土地の占有を続けた。
しかるところ、田上嘉八郎は右和解成立後別紙目録第二(二)の建物を被告二井蓄電器株式会社(以下被告二井という)に、同目録第二(三)の建物部分を被告株式会社中央熱学機械製作所(以下被告中央熱学という)に使用せしめ、各建物の敷地並びに通路として被告二井は別紙目録第一(三)の土地を、被告中央熱学は同目録第一(四)の土地を各使用占有するに至つた。
右被告二井、同中央熱学は右各土地使用開始当時から、原告と田上嘉八郎間の和解が存し、同人は昭和三五年五月一日以後は右各土地を占有すベき権原が存しなくなり、自己らにおいても占有権原が消滅することを知つていたにも拘らず、右各自己らの占有土地につき原告に対して明渡をしないよう田上嘉八郎と共謀し、同日以後も占有を継続し、かつ、原告が前記和解調書正本に基づき昭和三五年六月一七日土地明渡の執行をすべく田上嘉八郎に対して建物収去命令(昭和三五年(モ)第七、一四三号建物収去命令申請事件)を得たところ、同人は右決定に対して即時抗告をなし、更に同抗告が昭和三六年三月一六日棄却され、確定するや、今度は被告二井、同中央熱学は、自己らの占有開始が右和解成立後であつて執行を当然に忍受すべき地位にあるのに、和解成立前から占有していたと虚偽の主張をして昭和三六年四月七日第三者異議の訴を東京地方裁判所に提起(昭和三六年(ワ)第二五八七号)し、同時に執行停止決定の申請をして同月一一日停止決定を得て、原告の強制執行を妨げ、もつて占有を不当に続けていたが、昭和三七年一二月二二日右被告らの請求は一審で棄却され、被告らはこれに控訴し昭和三八年一月一一日執行停止決定を得たが昭和三八年七月一七日東京高等裁判所で控訴棄却の判決があり、同判決がその後上訴がなく確定した。よつて、原告は昭和三八年一〇月三一日に至つて右土地の明渡をうけることができた。
四、原告は、右田上嘉八郎及び同人の義務を承継した前記相続人たる被告ら並びに被告二井、被告中央熱学の前記各土地の不法占有継続により、本件土地の他占有していない同目録第一(五)の土地部分をも含めてこれら全部の使用も妨げられた。即ち、別紙目録第一(三)(四)(五)の土地は別紙図面<省略>記載の如き地形にあるため、本件土地について全部又は一部でも被告らの占有が存するかぎりこの占有により本件土地と同目録第一(五)の土地全部について利用価値がないから、結局これらの土地全部の使用収益が妨げられていることとなり、原告がこのためにうけた損害を被告らは賠償する責任がある。
五、原告は右の如く昭和三五年五月一日から昭和三八年一〇月三一日までの三年六月の間本件土地並びに別紙目録第一(五)の土地の使用取益を妨げられたことによりつぎのとおりの損害をうけた。
(一) 右使用を妨げられた土地の同期間中における相当地代額は坪当り一カ月四四円であり、同土地の面積は少くとも一八〇坪あるから、同期間の相当地代額合計は三三二、六四〇円となり、原告は同額の損害をうけた。
(二) 原告が昭和三五年四月三〇日に田上嘉八郎及び被告二井、同中央熱学から前記占有土地の明渡をうけていたならば同年五月一日には田上嘉八郎においても本件土地並びに別紙目録第一(五)の土地を他に賃貸することができ、さすれば権利金として坪当り三五、〇〇〇円の割合により合計四三〇万円の利得たはずである。
しかして、右所得につき課税所得額は右金額から所得税法の定めにしたがい一五万円を控除し、残額を二分するとその額は二、〇七五、〇〇〇円となるところ、田上嘉八郎の昭和三五年度課税所得額は七七四、二三八円であるから、同人が右権利金を利得しえた場合の課税所得額の合計は右二、〇七五、〇〇〇円に七七四、二三八円であるから、同人が右権利金を利得しえた場合の課税所得額の合計は右二、〇七五、〇〇〇円に七七四、二三八円を加えた二、八四九、二三八円となるはずであつた。
そして、同所得額に対する税額は、右所得額に一〇〇分の四〇を剰じて得た金額から二九万円を控除した残額八四九、六九五円となるところ、田上嘉八郎は前記七七四、二三八円に対する税額一五二、五〇〇円を納付しているから田上嘉八郎において前記権利金の所得があつた場合には右八四九、六五五円から右一五二、五〇〇円を控除した残額六九七、一九五円を余計に納入すべき筋合のものであつた。
したがつて、同人が前記権利金四三〇万円を得た場合に自由に利用処分することのできる額は同金額から右六九七、一九五円を差引いた残額三、六〇二、八〇五円となる。
しかして、この三、六〇二、八〇五円を期間五年の貸付信託又は投資信託により運用すると年七分の割合による利益金を得たはずであるから、三年六月間の利益金合計は八八二、〇〇〇円となる。
仮りに右率による計算が認められないとしても、民法所定年五分の割合で運用し同率による利益金合計六三万円の利益を得ることができたはずである。
しかるに、原告は右各土地の利用を妨げられたため、これを他に賃貸することができず、したがつて権利金を得ることができなかつたため右利益をあげることができなかつた。
六、原告は昭和三五年六月一七日頃前記和解調書正本に基づいて、債務者たる田上嘉八郎に対し本件建物収去並びに本件土地明渡執行に着手したところ、前記の如く被告二井、同中央熱学は昭和三六年四月七日原告に対し第三者異議の訴を提起したがこれは右被告らと田上嘉八郎が共謀してその訴の理由がないのに原告の土地明渡の執行を妨害する目的をもつてなされたもので、この訴提起は田上嘉八郎、被告二井、被告中央熱学の共同不法行為というべきである。
しかして、この不当な訴のため原告は応訴せざるを得なくなり弁護士永津勝蔵に訴訟委任をし、応訴したところ、一審、二審とも原告勝訴の判決があり、昭和三八年七月一七日言渡のあつた二審判決は上告もなく確定したが、原告は右永津弁護士に対して一審の着手金並びに報酬金として一五万円支払い、更に二審判決言渡頃報酬金として三万円支払い、結局一八万円の支出を余儀なくされた。
七、田上嘉八郎は昭和三二年四月三〇日前記東京高等裁判所で和解をなした際、同人が原告に無断で伊藤建設工業株式会社に使用せしめていた別紙目録記載第一(一)記載土地のうち約四〇坪について、原告が訴訟手続によつて同地上にある同会社所有の仮小屋及建築材料等を除却することを原告に委託し、そのために要した費用は全て田上嘉八郎において支払う旨約し、原告はこれを承諾した。
そこで原告は永津弁護士に訴訟委任をなし、同会社を相手方として昭和三二年五月二一日東京地方裁判所に右約四〇坪の土地につき明渡断行の仮処分申請をなし、数度にわたる審尋を経ているうち、同年六月二〇日大森簡易裁判所において和解が成立するに至り、原告はこの費用として永津弁護士に同日二万円を支払つた。
したがつて、田上嘉八郎は原告に対し右二万円を委任事務処理費用として償還する義務がある。
八、したがつて、被告二井、同中央熱学は共同不法行為者として第五、六項記載の損害一、三九四、六四〇円を各自原告に対して支払うべき義務があり、また田上嘉八郎は第五項の損害のうち同人が死亡した昭和三七年一月二三日までに生じた損害並びに第六、七項記載の損害並びに費用を原告に対し支払うべき義務が存したところ、同人の死亡により、その義務を被告アサ子は三分の一、被告かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋は各九分の一の割合をもつて相続により承継し、更に田上嘉八郎の死亡後はその相続人たる右被告らにおいて和解契約に基づく本件土地の明渡義務を承継したのに同義務を履行せず同土地を占有しているのであるから同被告ら自身の右明渡義務不履行若しくは不法行為責任として第五項記載の損害のうち田上嘉八郎の死亡後生じた損害を右各相続分に応じて支払うべき義務がある。そうすると結局被告アサ子は四七一、五四七円、その他の田上嘉八郎の相続人たる右被告らは各自一五七、一八二円をそれぞれ支払う義務がある。
よつて、原告は被告らに対し右にしたがつて金員の支払を求める。
(被告らの抗弁に対する認否)
否認する。
被告らは「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、つぎのとおり述べた。
(答弁)
一 請求原因第一、二項は認める。
二 同第三項は被告二井、同中央熱学が原告主張の土地を占有していたこと、原告がその主張のとおり土地明渡の執行をすべく建物収去命令を得たところ、これに対し田上嘉八郎が抗告をなし、また被告二井、同中央熱学が第三者異議の訴を提起し、執行停止をしたこと、右抗告並びに訴が原告主張のとおりの経過により終了し、被告らが本件土地を昭和三八年一〇月三〇日原告に明渡したことは、いずれも認める。他は否認する。
三 同第四項の事実は否認する。
四 同第五項はそのうち、原告の昭和三五年度課税所得額並に税額は不知、他の事実は否認する。権利金は地代家賃統制令第一二条の二に違反し元来受取れないものであるから、損害とは言えない。又土地の利用権が侵害された時生ずる通常損害は相当賃料額であるというべきであつて、権利金は通常生ずべき損害とは云えない。
五 同第六項の事実はそのうち、被告二井、同中央熱学が第三者異議の訴を提起し、同訴訟が原告主張のとおりの結果で終了したこと、同訴訟について原告が永津弁護士に訴訟委任したことは認める。原告が同弁護士に費用を支払つたことは不知、他の事実は否認する。田上嘉八郎から被告二井は昭和二九年四月一日、被告中央熱学は昭和三〇年一月一〇日にそれぞれ各占有家屋を賃借し以来これを占有しているものであるから、元来原告主張の和解調書に基づく執行を忍受すべき義務はなく、右第三者異議の訴には正当な理由があつたものである。したがつて、右被告らの第三者異議の訴提起並びに執行停止行為は正当な権利の行使であつて、不法行為と云うことはできない。
六 同第七項の事実は否認する。
七 同第八項はそのうち、田上嘉八郎が死亡し、被告アサ子は三分の一、同かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋は各九分の一の割合で相続した事実は認めるが、他は争う。
(抗弁)
原告主張の和解成立直後、当時原告の訴訟代理人であつた永津弁護士と田上嘉八郎、同人の訴訟代理人であつた石川弁護士らが品川区大井の割烹「竹の家」で会食した際、永津は和解によつて定められた三年間の明渡猶予期間満了後も明渡は求めず、引き続き期間は本件家屋が朽廃するまでとし、右猶予期間後は使用賃借として本件土地を田上嘉八郎に使用させることを承諾した。したがつて、田上嘉八郎は右内容の使用借権を取得したものであるから、右和解による猶予期間満了するも土地明渡義務はなくその後も右田上において右土地を適法に占有すべき権原があつた。
又、被告二井は別紙目録第二(二)の建物を同中央熱学は同目録第二(三)の建物を前述の如く右田上から各賃借したものであるからその敷地たる同目録第一(二)(三)土地占有は適法である。
証拠関係<省略>
理由
第一、原告の被告アサ子、同かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋に対する請求についての判断
一、原告の土地使用ができなかつたことによる損害賠償請求について
(一) 請求原因第一、二項は当事者間に争いがない。
したがつて、原告主張の和解により田上嘉八郎は昭和三五年四月三〇日までに本件建物を収去して本件土地を原告に明渡すべき義務を負つたものである。
被告らは、右和解成立後に原告と田上嘉八郎間に改めて使用貸借契約が成立したと抗弁するのでこの点について考えるに、証人永津勝蔵、同石川勝治、同田上泰一郎の各証言によれば昭和三二年四月三〇日和解成立直後の当日、原告の訴訟代理人であつた永津勝蔵、田上嘉八郎、同人の訴訟代理人であつた石川勝治が食事を共にした際、田上から右永津に対し和解により決められた期間満了後も引続き本件土地を貸してもらいたい旨の意向を表明したことは認められるが、永津がこれを承諾したことは認められず、むしろ右各証言によればこれを拒絶したことが認められ、他に右被告らの主張を認めるに足る証拠はない。
しからば、田上嘉八郎は和解によつて定められたところにしたがつて昭和三五年四月三〇日までに本件建物を収去して本件土地を明渡す義務があり、同日を経過するもその義務を履行しなかつたこと(この点は争いがない)は債務不履行であり、右義務は昭和三七年一月二三日同人の死亡により被告アサ子が三分の一、同かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋が各九分の一の割合をもつて共同相続したものというべきであるから、相続後なお本件土地を明渡さなかつたのは右被告らの債務不履行となる。
したがつて、右債務不履行により原告のうけた損害は、田上嘉八郎の債務不履行により生じた損害については同人の相続人として右各相続分の割合で、同人か死亡後に生じた損害については右被告ら自身の債務不履行による損害賠償責任として、右被告らにおいてそれぞれ原告に支払う責任がある。
(二) そこで右被告らが原告に賠償すべき損害額について考えるに、
(1) 田上嘉八郎及び右被告らの本件土地明渡義務不履行により、原告が本件土地の使用収益ができなかつたことは明らかであるから、これによつて生じた損害は本件土地の相当賃料額であると解すべきであるところ、鑑定の結果によれば、本件土地の昭和三五年五月一日当時の更地としての適正賃料は一カ月一坪当り四四円の割合であることが認められるからこれを基礎に本件土地の相当賃料額を計算すると、本件土地の面積は一二〇坪四合(この点は争いがない)であるから一カ月五、二九七円六〇銭となる。しかるところ右被告らが本件土地を原告に明渡したのは昭和三八年一〇月三一日であるから、原告は三年六月の間田上嘉八郎並びに右被告らの債務不履行により本件土地の使用収益かできなかつたこととなり、その間の損害額は右金額に基づいて計算すると二二二、四九九円(円未満四捨五入)となる。
原告は本件土地の明渡をうけなければ被告らが占有していない別紙目録第一(五)の土地も利用価値はないから、同土地に対する相当賃料額も本件土地の明渡義務不履行によつて生じた損害であるとしてこれを請求しているが、鑑定並びに検証の結果によれば別紙目録第一(五)記載の土地は巾六・五〇間にわたつて公道に面しており、同土地部分のみの昭和三五年五月一日当時の適正賃料額も一カ月一坪当り四七円であることが認められ、このことから考えて、本件土地の使用収益が防げられていることにより別紙目録第一(五)の土地の利用価値がないということは云えないこと明らかである。また、検証の結果によれば本件土地の大部分が公道との間に別紙目録第一(五)記載土地をはさんだ地形にあることが認められるので、同土地と本件土地を一括して利用する方が各別に利用するよりも利用価値が大きくなるであろうことは一応考えられ、したがつて原告としては別紙目録第一(五)の土地を単独で利用収益せず本件土地の明渡を待つて、そのうえで一括して利用取益すべく右土地の利用収益をしなかつたものと考えられないこともないが、右認定の如く仮りに本件土地を右土地と別個に利用収益したとしても十分利用価値があるものであるのみならず、右の如き事由により生ずる右土地に対する相当賃料額による損害は本件土地の明渡義務を履行せず、これを不法占有していることにより生じた損害とは云えない。したがつて、この点の原告の主張は理由がない。
(2) 次ぎに、原告は本件土地の明渡をうけ得たならば、本件土地及び別紙目録第一(五)の土地を他に賃貸して権利金を得、この権利金を運用して利息金を得ることができたはずであるからこの利息金相当の損害が生じたと主張するけれどもかかる損害は土地明渡義務の不履行や土地の不法占有により土地所有者に通常生ずべき損害とは云えず、特別の事情による損害と認むべきところ、かかる特別事情に当るべき事実の主張を原告はしていないのみならず、かかる事情の存することを認めるに足りる証拠もないから、右被告らに対する原告の請求原因第五項(二)の損害請求部分は全て理由がない。
(三) しかして、原告は右被告らに対する田上嘉八郎並びに同被告らの本件土地明渡義務不履行による損害の請求は、田上嘉八郎の行為によつて生じた損害は各相続分に応じて請求し、かつ右被告らの行為により生じた損害についても相続分の割合によつて各被告に請求しているのであるから、結局同被告らは前記認定の原告の損害二二二、四九九円を被告アサは三分の一、その他の右被告らは各九分の一の割合によつて計算した金額を原告に支払うべきことを命ずべきところ、これを計算すると、被告アサは、七四、一六六円、その他の右被告はそれぞれ二四、七二二円(いずれも円未満四捨五入により計算)を原告に支払うべきである(この被告らの各支払義務はいわゆる不真正連帯の関係にはたたず、各被告の支払義務は他の被告の支払の有無によつて影響はない)。
二、原告の請求原因第六項の被告二井、同中央熱学が原告に対し提起した第三者異議訴訟に応訴したことにより生じた損害の賠償請求について
被告二井、同中央熱学が昭和三六年四月七日原告に対して第三者異議の訴を提起し、これに対し原告は訴訟代理人として弁護士永津勝蔵に訴訟委任し応訴したことは当事者間に争いがない。
原告は右訴提起は原告の田上嘉八郎に対する本件土地明渡執行を妨害する目的で同人と被告二井、同中央熱学が共謀のうえなした行為であると主張するけれども、田上嘉八郎が右執行を妨害せんがために右訴提起について共謀したとの事実は本件全証拠によるも認めることができない。
したがつて、右第三者異議の訴の当、不当並びに損害額を判断するまでもなく右被告両名以外の田上嘉八郎の相続人たる被告らに対する右応訴により生じた損害の賠償請求は理由がない。
三、原告の請求原因第七項の委任事務処理費用償還請求について
成立に争いのない甲第四、五号証及び証人永津勝蔵、同石川勝治の各証言によれば、田上嘉八郎は原告所有の別紙目録第一(一)の土地の一部約七〇坪を伊藤建設工業株式会社に原告には無断で使用せしめていたところ、前記和解により、同部分について田上嘉八郎に賃借権を有しないことが確認され、更に、同和解成立直後右田上は原告の訴訟代理人として和解に関与していた永津弁護士から右会社に右使用部分の土地を明渡さすよう要求をうけた際、その明渡を原告において訴訟手続によつてなしてくれるよう依頼し、そのために必要な費用は自分が負担する旨約したこと、そこで原告は永津弁護士に訴訟委任をなして右会社を債務者として仮処分申請をなし、その途中において昭和三二年六月二日大森簡易裁判所において即決和解が成立し、これに基づいて同月三〇日頃原告が右土地の明渡を右会社からうけたこと、原告はその頃永津弁護士に右訴訟に対する報酬、費用として二万円支払つたこと、が認められ、これに反する証拠はない。
しかして、右事実によれば、本来ならば田上嘉八郎において伊藤建設からその使用土地の返還をうけ原状に復してこれを原告に返還すべきところを、この自己のなすべき義務の履行をいわば原告に依頼してなしたものといえるから、田上嘉八郎はそのために原告が支出した右二万円を原告に支払うべき義務がある。
しかるところ、田上嘉八郎の相続人たる被告らは前記の如く田上嘉八郎の死亡により前記割合をもつて同人の債務を承継したものであるから、右債務を被告アサ子は六、六六七円、その他の被告らは各二、二二二円(いずれも円未満四捨五入により計算)の各割合で支払うべきである。
四、そうすると、被告アサ子、同かず子、同文子、同幸子、同嘉一、同芳男、同小椋らは二項、四項の各支払義務のある金員の合計即ち、被告アサ子は八〇、八三三円、その他の被告はそれぞれ二六、九四四円を原告に対し各自支払うべきである。
原告の右被告らに対する請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がなく、これを棄却すべきである。
第二、原告の被告二井、同中央熱学に対する請求についての判断
一、土地不法占有による損害賠償請求について
(一) 田上嘉八郎並びにその相続人である前記被告らの本件土地占有は昭和三五年五月一日以降その権原がないものであつたことは前記第一記載のとおりである。
しかしてまた、同日以前から昭和三八年一〇月三〇日までの間田上嘉八郎並びにその相続人たる被告らの承諾のもとに被告二井は別紙目録第二(二)の建物を使用して同目録第一(三)の土地を占有し、被告中央熱学は同目録第二(三)の建物を使用して同目録第一(四)の土地を占有していたことは当事者間に争いがないけれども、証人永津勝蔵、同石川勝治の証言によれば、本件土地を含む別紙目録第一(一)の土地のうち三六四坪三合の土地につき、原告と田上嘉八郎に紛争が生じ、原告は昭和二七年一月頃右田上に対し土地賃借権の無断譲渡、賃料不払による土地賃貸借契約解除を理由に本件建物収去右土地明渡の訴を提起し、一審は原告が勝訴し控訴審において前記和解が成立したものであり、右原告の主張は理由の存するものであつたことが認められ、これに反する証拠はない。しからば、原告と田上嘉八郎間の右和解は被告二井同中央熱学に対しても対抗し得、同被告らは自己が使用している建物の所有者たる右田上にその敷地の占有権が右和解により存しなくなつた以上、自己らも当然その敷地の占有権原がなくなつたものである。
(二) しかして原告は被告二井、同中央熱学の本件土地不法占有を理由とする損害賠償請求は建物所有者たる田上嘉八郎同人死亡後はその相続人らから同建物の使用を認められてこれを使用し、その結果同建物の敷地を占有している右被告二井、同中央熱学に対し、右各土地の占有により、原告が右敷地部分を含む本件土地及び別紙目録第一(五)の土地の使用を防げられたとして、これにより生じた損害を請求しているものである。
しかしながら、他人が所有権を有する土地に無権原で建物を所有する者からその建物の使用を認められて占有する者がある場合、その者の建物の占有使用と土地所有者がその土地を使用できないこととの間には特段の事情の存するときにかぎり相当因果関係があると解すべく、したがつて、かかる特段の事情の存しないかぎり、建物の占有使用の結果その敷地をも占有することになり、これが土地所有権者に対抗しうべき権原がない場合であつても、土地所有者に損害を賠償する責任はない。
そこで、右に述べた特段の事情が存するか否かについて考えるに、原告は前記和解調書正本に基づく本件土地明渡の強制執行をすべく昭和三五年六月一七日田上嘉八郎に対する建物収去命令を得たところ、同人は右決定に対して即時抗告をなし、同抗告は昭和三六年三月一六日棄却され確定したこと、被告二井、同中央熱学は昭和三六年四月七日原告に対し第三者異議の訴を提起し、同月一一日執行停止決定を得、昭和三七年一二月二二日右訴について第一審において請求棄却の判決がなされるやこれに控訴し同三八年一月一一日再び執行停止決定を得て本件土地の占有を継続していたが、同年七月一七日控訴棄却の判決をうけ、同判決が確定したため同年一〇月三〇日被告二井は別紙目録第二(二)の建物から退去して同目録第一(三)の土地を被告中央熱学は同目録第二(三)の建物から退去して同目録第一(四)の土地をそれぞれ原告に明渡したことは当事者間に争いがなく、かかる事実からして田上嘉八郎において任意に本件土地明渡の履行を和解の定めにしたがつてなす意思のなかつたことは明らかであり、また、原告の和解調書正本に基づく本件土地明渡の執行が右田上嘉八郎並びに被告二井、同中央熱学の右の如き抗争によりその間阻止されたことは明らかである。
しかしながら、田上嘉八郎が原告に対して本件土地明渡を故意になさず、右の如き抗争をして執行を阻止したことについては、これが同人と被告二井同中央熱学の共謀によつてなされたものであるとの事実を認めるに足りる証拠はないから田上嘉八郎の右の如き抗争のために原告において同人に対する本件土地明渡の強制執行ができないものである以上、その間被告二井同中央熱学が同土地上の建物から退去しなかつたとしても、このことと原告が本件土地の使用収益が妨げられたこととは相当因果関係がなくそのために生じた損害は被告二井同中央熱学において賠償する責任はない。
しかしながら、田上嘉八郎がなした建物収去命令に対する即時抗告は棄却され、これは遅くとも後記の如く被告二井同中央熱学が自ら強制停止決定を得た昭和三六年四月一一日の前日までには確定したものと推認されるから、原告はその後においては和解調書正本に基づき本件土地明渡の強制執行ができたはずである。そして、被告二井は別紙目録第一(三)の土地、同中央熱学は同目録第一(四)の土地の占有につき原告に対抗しうべき権原を有していないのであるから、同被告からは同強制執行の場合にはそれぞれ右土地上の建物から退去して各占有土地を原告に明渡す義務の存する筋合である。しかるところ、同被告らは前記の如く原告に対して第三者異議の訴を提起し、強制執行停止決定を得るなどして抗争し原告の強制執行を阻止し、右各土地の占有を継続したものであり、かように右被告らが抗争して土地の占有を継続している以上、原告は強制執行ができないこと明らかであるから、結局右被告らが昭和三六年四月一一日以降右各土地を右のように抗争をして占有を継続したことはその間原告が同土地を使用収益できなかつたことと相当因果関係がある。しかして、前述の如く右被告らには土地占有の権原が存しないのであるから、和解成立前から右被告らが本件建物の一部ずつを田上嘉八郎から賃借し占有をしていたものであるとの理由により、右被告らの提起した第三者異議の訴が理由のあるものであるとしても、なお被告二井の別紙目録第一(三)の土地占有、被告中央熱学の同目録第一(四)の土地の占有はいずれも原告の右各土地の所有権を侵害する違法な行為と云わざるを得ない。
また、以上の事実からして被告二井、同中央熱学は遅くとも昭和三六年四月一〇日までには原告において田上嘉八郎に対し本件土地明渡の強制執行をなし得べき状況にあり、自己らが右の如き抗争により占有を続ければこれによつて原告は強制執行ができず、本件土地の使用収益が妨げられる結果になることは十分認識していたものと考えられる。
しからば原告に対し、被告二井は別紙目録第一(三)の土地につき原告が昭和三六年四月一一日から明渡をうけた昭和三八年一〇月三〇日までの間同土地の使用収益ができなかつたことによりうけた右土地に対する相当地代額による損害を賠償する責任があり、被告中央熱学は別紙目録第一(四)の土地につき原告が同期間同土地の使用収益ができなかつたことによりうけた相当地代額による損害を賠償する責任がある。
原告は右被告らの各土地占有が存する以上、占有をしていない土地(被告二井の関係では別紙目録第一(四)(五)の土地、被告中央熱学の関係では同目録第一(三)(五)の土地)のみでは利用価値が全くないから、右被告らは同土地に対する相当地代額による損害を賠償すべきであると主張するけれども、鑑定並びに検証の結果に照すれば右各土地を区々に利用することは可能であり、そうしても利用価値が全く無くなるものでないことは明らかであるから第一、一(二)(1) 記述と同一の理由により右原告の主張は理由がない。
しかして、右被告らが原告に賠償すべき相当地代額による損害額を検討するに、鑑定の結果によれば昭和三五年五月一日当時の相当地代額は別紙目録第一(三)の土地については一坪当り一月四三円、同目録第一(四)の土地については一坪当り四四円の各割合であること、同目録第一(三)の土地の面積は四五坪三勺、同目録第一(四)の土地の面積は八四坪九合五勺であることが認められ(これに反する証拠はない)、これによつて計算すると右各土地の一月の相当地代額は同目録第一(三)の土地については、一、九三六円、同目録第一(四)の土地については三、七三八円(いずれも円未満四捨五入)となり前記昭和三六年四月一一日から昭和三八年一〇月三一日までの間の合計相当地代額は同目録第一(三)の土地については五九、三九二円、同目録第一(四)の土地については一一四、六七二円となる。したがつて、原告に対し被告二井は五九、三二九円、被告中央熱学は一一四、六五六円をそれぞれ損害賠償として支払うべきである。
三、原告は右被告らに対しても同人らの不法占有による損害として以上の他に本件土地及び別紙目録第一(五)の土地に対する権利金運用により得べかりし利息金相当の損害を請求しているが、第一、一(二)(2) で述べたところと同一の理由により失当である。
四、原告の請求原因第六項の請求-弁護士費用の請求-について、
原告は、被告二井、同中央熱学の右各土地占有は前記和解の成立した昭和三二年四月三〇日以後であるから、同被告らは当然右和解調書に基づく強制執行を忍受すべき地位にあるから、同被告らの提起した第三者異議の訴は不当なものであると主張する。
成立に争いのない甲第七、八号証によれば右被告らが右第三者異議の訴の理由として主張するところは、被告二井は昭和二九年四月一日から別紙目録第二(二)の建物を田上嘉八郎から賃借占有していると主張し、被告中央熱学はその代表取締役江崎勘次郎が昭和三〇年一月一〇日から同目録第二(三)の建物を賃借占有し、昭和三三年八月右被告がこれをゆずりうけ以来引つゞき占有していると主張するものであつたことが認められるが、成立に争いのない甲第一ないし第三号証と証人永津勝蔵の証言によれば、田上嘉八郎と原告の間に本件土地を含む原告所有の土地の賃借権につき争いが生じ、原告は田上嘉八郎を債務者として昭和三〇年七月七日「債務者田上嘉八郎の本件建物及びその敷地たる土地三六四坪三合に対する占有を解いて執行吏にその保管を命ずる、執行吏は現状を変更しないことを条件に債務者にその使用を許さなければならない、債務者はこの占有を他人に移転しまたは占有名義を変更してはならない」などの趣旨の仮処分命令を得、同月一一日その執行をしたが、これに立会つた田上嘉八郎の娘婿田上泰一郎が本件建物は債務者の占有で第三者の占拠者のないことを陳述し、執行吏は調査したところ債務者以外に占拠するもののないことが明らかとなつたこと、その後右仮処分の執行は昭和三三年五月九日解放されたことを認めることができこの事実によれば、右仮処分の執行当時は勿論、和解成立当時も被告二井同中央熱学が本件建物の全部は勿論、その一部分すらも占有していなかつたことが明らかである。もつとも、証人浜島厳男の証言により成立の認められる乙第二号証、乙第三号証の一、二、三、乙第四号証の一、二、乙第五号証の一、乃至五、弁論の全趣旨から成立の認められる乙第七乃至一五号証と右証言及び証人田上泰一郎の証言によれば、被告二井は昭和二九年四月一日田上嘉八郎と別紙目録第二(二)の建物部分を製品資材置場として使用する旨の契約をなし、同部分を改造して製品資材の出入れなどをするに至り、また同製品資材のために昭和二九年四月四日以来継続して火災保険をかけていたことが認められるけれども、被告二井の右仮処分執行当時における右建物部分の使用は単に田上嘉八郎の占有下にある建物に製品資材を置いて、その出し入れをしていた程度のものと推認され、同被告には占有がなかつたものとみられるから、右認定の事実をもつてしては同被告に占有がなかつたとの前記認定を左右することはできず、証人浜島厳男、同田上泰一郎の右仮処分執行当時被告二井が右建物部分を占有していたとの供述部分は右甲号証並びに証人永津勝蔵の証言に照らして措信することができない。
また、証人田上泰一郎の証言により成立の認められる甲第一号証甲第六号証の一、二、三と同証言によれば被告中央熱学の代表取締役江崎勘次郎が昭和三〇年一月一〇日田上嘉八郎から別紙目録第二(三)の建物を賃借し、その後これを被告中央熱学が譲りうけたことがうかがわれるけれども、これをもつてしては未だ前記仮処分執行当時田上嘉八郎以外の者の占有がなかつたとの前記認定を覆すに足らずまた、証人田上泰一郎は右同日以降右被告が右建物部分を占有していた旨供述するけれども、甲第一ないし三号証、証人永津勝蔵の証言に照して右供述部分は措信できない。しかして以上の他に右認定を覆すに足る証拠はない。
しからば、右被告らが和解成立後において本件建物を占有するに至つたとしても、その占有を債権者たる原告に対し第三者異議の理由として主張することのできないものであるので、結局被告らは原告の前記和解調書正本に基づく本件土地明渡の強制執行を忍受すべきであつたのであるから、同被告らの第三者異議の訴は不当な抗争といわざるを得ない。
しかるところ、同被告らにおいて、右抗争をその理由がないものであることを知りながら故意になしたものであることを認めるべき証拠はない。しかし故意がなかつたとしてもその理由の存否は専ら占有の有無及び占有開始の時如何によつて決せられるものであつて、かような事由は容易に知りうるはずである、にもかかわらずこれを知らず右抗争を理由のあるものと考えてなしたことは過失による不当抗争というべきである。
しかして、右被告らの不当抗争は相手方たる原告に対する不法行為というべきところ、甲第七、八号証によれば右被告らは共同原告として原告に対して第三者異議の訴を提起し抗争したことが認められるので、右被告らの共同不法行為と認めるのが相当である。したがつて、同被告らは原告がこれによつてうけた損害全部を各自賠償する責任がある。
そこで右不当抗争によつて原告がうけた損害額を検討するに、原告が訴訟代理人として永津勝蔵に委任し、右被告ら提起の第三者異議の訴に応訴したことは当事者間に争いがなく、証人永津勝蔵の証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は同人に対し、五万円を報酬として支払う旨契約し、そのうち二五、〇〇〇円は同訴訟終了前に支払い、残額二五、〇〇〇円は同訴訟の終了のとき勝敗にかかわらず支払うことを約したことが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。しかして前記の如き第三者異議の訴の訴訟経過からして右認定の五万円の報酬は高額すぎるとは云えない。
しからば被告二井、同中央熱学は右五万円を各自原告に対して支払う義務がある。
原告は、永津弁護士に着手金並びに報酬として合計一八万円支払つたと主張するけれども右認定の金額を超える部分については右主張事実を認めるに足りる証拠はない。
五、そうすると、右被告らは原告に対し二、四項の各支払義務のある金員の合計即ち被告二井は一〇九、三二九円、被告中央熱学は一六四、六五六円を各自原告に対して支払うべきである。
以上の次第であるから、原告の右被告らに対する請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がなく、これを棄却すべきである。
第三、よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西山要 中川哲男 岸本昌己)